長崎県の中で雲仙の次に寒い所と言われる中尾山は、陶磁器製造の秘密が知られないように山々の谷間にあり、400年の長きに亘り日用食器の産地として現在まで継承されてきました。陶郷としての風情と自然景観に恵まれ、人情味溢れる里として、今では多くのメディアに取り上げられています。
中尾山は北から南に本通りがあり、これに沿ってほぼ平行に川が流れ、東側には神仏(大神宮、陶山神社、御観音様、聖徳太子、護国神社、稲荷神社)、西側には御先祖様のお墓があり、周囲を山に囲まれた緑豊かな里です。田畑がなく、窯業一筋の里で、400年の歴史を持つとされる世界最大の登り窯(大新窯、大登窯)が発掘されています。
先人たちは、この170mもの窯を焚きあげるのに、神仏に祈りながら仕事をしていたのではないでしょうか。陶山三神社の祭礼は現在においても脈々と受け継がれ、陶芸の里に相応しい景観はこの地を訪ねた人達に心地よい感動を与えてくれます。
また、県の文化財として保存されているレンガ造りの長い煙突が昔のやきものづくりを偲ばせ、今ではこの地の貴重なシンボルとなっています。
毎年たくさんの人で賑う桜陶祭は、平成元年の若焼会の野焼き作品の出展を始まりとします。その取り組みが広く郷民の共感を呼び、郷民総参加のイベントへと発展しました。今では、4月の第一土曜・日曜日に開催され、この日は各窯元が家を開放して出店し、陶箱弁当のほか、この地ならではの商品を格安で販売しています。
平成4年には里づくり協議会が発足し、ガードレールがレンガの登り窯をイメージしたものになり、更に枝道のレンガ敷なども整備され、郷内の橋名も郷民からの募集により命名しました。
平成8年には新しく交流館が完成し、二階には古陶磁器の展示と郷内各窯元の商品の即売も行っています。交流館の近くには、ロクロによる作陶などができる伝習館があり、低価格で宿泊できる施設も整備され、波佐見の顔としての役割を担っています。 |